原作の重み
本公演で『天国までの百マイル』を上演することが決定しました。
八木柊一郎先生の脚本は何度も読みましたが、浅田次郎先生の書かれた原作はずいぶん前に単行本で読んで以来読んでいませんでした。本格的な稽古に入る前にもう一度原作を読もうと思って本を探したのですが見つかりません。引っ越しの際に紛失したか、あるいは人に貸したか、とにかく見つからなかったので至急アマゾンで注文し、早速読んでみました。
主人公の城所安男は四十歳。2年前に会社を潰し自己破産しています。妻とも離婚し兄弟たちにも疫病神のように忌み嫌われています。その安男が心臓病の母きぬ江を千葉の病院に運ぶ。それがこの小説のあらすじです。
浅田作品に登場する人々はとても魅力的です。それは浅田先生が人間の行動の表層だけでなく、深いところを見据えて表現なさっているかだと思います。根が深いからこそ多くの人間の心の深くにも共鳴するのではないでしょうか。
小説では詳細に描写されている人物とその心情を、芝居では役者が演じなければなりません。配役はまだ決まっていませんが、どこまでオリジナルの人物に近づけるかがこの上演の鍵になるかと思います。責任の重さが身が引き締まる思いです。
↓ 『天国までの百マイル』の原作です。
天国までの百マイル (朝日文庫)作者: 浅田 次郎出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2000/10/01メディア: 文庫
↓ 浅田ワールドの原点と言ってもいいでしょう。映画も話題になりました。初期短編集…